東京家庭裁判所 平成6年(家)7763号 審判 1994年10月25日
申立人 ハロルド幸子
主文
申立人の氏「ハロルド」を「ハロルド甲野」に変更することを許可する。
理由
1 申立の趣旨及び実情
(1) 申立人は、日本において、平成5年10月15日英国国籍を有するハロルド、トマスパウエルローレンツと婚姻し、同日戸籍法107条2項の定めるところにより届け出てその氏を「甲野」から当時の夫の氏である「ハロルド」に変更した。
(2) その後、申立人は、夫とともに平成5年末に渡英し、平成6年1月12日に英国での適法な方式にしたがい、夫とともに「ハロルド」から「ハロルド甲野」に氏を変更した。
(3) そのため、申立人の氏が、日本では「ハロルド」、英国では「ハロルド甲野」となり、諸手続き及び社会生活上、煩雑を引き起こしているので、申立人の氏を「ハロルド甲野」に変更することを許可する旨の審判を求めた。
2 当裁判所の判断
本件記録及び裁判所調査官による調査報告書によれば、上記申立の趣旨及び実情記載の事実のほか、以下の事実を認めることができる。
(1) 申立人は、英国での日常生活において「ハロルド甲野」を名乗り、手紙の宛て名、国際運転免許証、銀行口座名義、国民保険番号等にも「ハロルド甲野」と記載されている。
(2) ところが、パスポートに記載されている氏を変更するためには、氏の変更許可を経て戸籍に記載されることが必要となってくるため、現時点では括弧付きで「ハロルド甲野」と記載されるに止まっている。
そのため、本年8月に予定されていたサウジアラビアへの赴任は、申立人とその夫の氏が異なるとの理由で同国の配偶者ビザが発給されず、結局赴任を断念せざるを得なかった。
以上の認定事実によれば、申立人はその夫とともに「ハロルド甲野」を称していること、申立人の戸籍上の氏が、英国での夫婦の氏と異なるため、日常生活及び法的ないし社会的諸手続きにおいて多大な不便が生じていること、申立人の今後の生活のためには、氏の変更の必要があることが認められる。
よって、当裁判所は、申立人には戸籍法107条1項の氏を変更すべきやむを得ない事由があるものと認め、主文のとおり審判する。
(家事審判官 山崎恒)